国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構
QST病院

OPENCLOSE
  • 日本語
  • English

「がん」とはどんな病気?

人間の体はおよそ数十兆個の細胞により構成されています。細胞にはそれぞれ役割と機能の分担があります。長い年月にわたる持続的な刺激により細胞の遺伝子が傷つき、これが蓄積して細胞が想定される役割・機能を逸脱し、悪性のものに転換してがんになると考えられています。「悪性である」とは、無制限に増えたり、近くの組織や臓器に浸入し破壊したり(浸潤)、身体の別な部分に広がったり(転移)する性質を持つことをいいます。
このような刺激を与える物質には、身近なものとして判明しているものに、タバコやアルコール、高脂肪食、紫外線、特定の化学物質(アスベストなど)、ウイルス感染、ピロリ菌感染などがあり、がんの原因となる一部のウイルスについてはワクチンで予防できるものもあります。ピロリ菌も除菌可能です。一方で、原因が全く不明な稀ながんもあります。
正常な細胞が変化してがん細胞になりますが、がん細胞になった後も変化を続け、最初のうちは効果があった治療が効かなくなったり、突然進行の速度が早くなったりすることがあります。

がんの治療

がんには様々な治療法があり、同じがんで、同じ進行度でも、患者さんによって治療法を変える場合があります。どのようにして治療法を選択しているのでしょうか?
がんはその場で周りの正常な構造を壊しながら大きくなったり、全身に転移して広がったりします。また、正常な細胞が変化してがんになりますが、がんがどこの臓器から発生したか、またどんなタイプのがんであるかによって、がんの性質も違います。大きくなる速さや転移のしやすさ、表面にどんなタンパクがあるのか、どんな遺伝子がおかしくなっているのか、といったがんの性質と、広がり方によって治療の方法も変わります。
がんが、ある領域にのみ存在するときは、その部分だけ治療すればよいので、こういった治療は局所治療と呼ばれます。手術や放射線治療は治療した部分にしか効果がありませんので、局所治療に含まれます。一方で、がんがリンパ節や他の臓器など、広い範囲に及んでいる場合には、全身をカバーするような治療(全身治療)として、薬物療法を行う場合があります。薬物療法には抗がん剤による化学療法、ホルモン剤による内分泌治療、分子標的治療、免疫チェックポイント阻害薬による免疫療法などがあります。局所治療も全身治療もそれぞれ、期待される効果とは別に、想定される有害事象も、治療自体のスケジュールや費用も異なります。
がん治療は戦争のようなもので、戦うにはまず敵を知ることが重要です。がんの治療には、どんな性質のがんが、どの範囲まで広がっているかを把握することが前提となります。可能であればがんの細胞そのものを採取して直接調べます。様々な治療について科学的根拠といえるデータがありますが、そのデータが当てはまるかは状況ごとに注意して検討する必要があります。ただし、稀ながんでは十分なデータがない場合もあります。
そしてよく戦うには己を知ることも不可欠です。治療の方針を考えるには、他にかかえる病気(合併症)や体力、社会的な状況、個人の価値観・人生観なども含めて検討する必要があります。治療の目標も病気や本人の状態によって変化します。また、以前よりもがんの治療後に長生きするようになったことで、治療後の生活についても考えることが重要になってきました。治療後の人生を考えるのは、患者さん本人やご家族が人生観・価値観を顧みることから始まります。その上で主治医や各科の医師とよく相談したり、セカンドオピニオンを聞いたりしたうえで、自分に最も合う治療を決めることが大切です。

さらにお調べになる方へ

患者さんやご家族が適切に意思決定をするためには、ある程度、がんに関する情報を理解する必要があります。インターネットとスマートフォンの普及により、がんに関する情報に手軽にアクセスできるようになりました。わからないことが不安を増幅させている状態から、情報を得て、今の状態やこの先のことを考えることで、前向きな気持ちで病気に向き合えるようになることも期待できます。また、定年が以前より伸びた結果、働きながらがん治療を続ける方も増えてきました。事業主によっては、治療と仕事を両立させるための制度を導入しています。休職する場合も、加入する健康保険によっては傷病手当金などの社会的サポートがあります。がん治療に伴う後遺症や衰弱に対しては、就労していても障害年金によるサポートを受けられる場合があります。これらのサポートには申請が必要で、手続きは人によっては複雑に感じますが、知らないとそもそも申請できないため、情報を得ることは大変重要です。
しかし、氾濫する情報にかえって混乱する場合もあります。病気に対する不安に付け込んだり、混乱を助長したりする有害な情報もあります。がんに関する知識は日進月歩で、インターネットの情報が古くなっていることもあります。インターネットの情報は玉石混淆で、情報の真偽を適切に判断するには一定以上の知識が必要になります。
一般の方向けの情報として有用な情報を提供するサイトを一部紹介します。科学的根拠のある情報でも、個々の病状や状態を勘案して、用いて良いか検討する必要がある点をご理解の上でご活用ください。

国立がん研究センター がん情報サービス

国立がん研究センターが運営する、がんに関する信頼のおける情報をわかりやすく提供するサイトです。

がんになったら手にとるガイド

がんの検査、治療や社会的支援について、患者さんやご家族に有用な基礎知識がまとめられています。がん情報サービスの中にあります。

Mindsガイドラインライブラリ

各種診療ガイドラインや、一般の方向けのガイドライン解説をまとめています。厚生労働省委託事業:EBM(根拠に基づく医療)普及推進事業により公開し、公益財団法人 日本医療機能評価機構が運営するサイトです。